和洋折衷の大正モダン建築。藤沢市が誇る文化財「旧近藤邸」

朝晩の気温が下がってきて、すっかり秋を感じられるようになりましたね。
「芸術の秋」にあこがれて、今回とある歴史的建造物を訪れました。
「かながわの建築物100選」に選ばれており、国の登録文化財にも指定されているその建築物は「旧近藤邸」。
とてもすばらしい建物だったのでご紹介したいと思います。

美しい日本の洋式建築

「旧近藤邸」は大正時代に建てられた名家の別荘です。
家主の近藤賢二氏は、実業家でありながら11人の子宝に恵まれたお父さんでもありました。
その建築のあちこちには別荘ならではの遊び心やこだわりがあり、当時の最先端の洋式建築が感じられます。

設計をした建築家の遠藤新は、帝国ホテルの設計で有名なアメリカの建築家フランク・ロイド・ライトに師事した人物でした。
彼は海外の建築様式を学びながらも建築と人間の調和をめざし、西洋の真似ではない「真の日本の住宅」を追い求めました。
旧近藤邸で私が見つけた彼の工夫をご紹介します。

明るさと開放感にあふれた室内

この建物に入ってすぐに思ったのは、とにかく室内が明るいということ。
それは玄関ドアから廊下、その他各部屋のすべてに作られた窓のおかげでしょう。
もちろん照明はあったはずですが、これらの窓によって外からの光をふんだんに取り入れられるようになっています。

階段を上がってすぐの空間も窓に囲まれたサンルーム。
外の景色が楽しめるのと同時に、暗くなりがちな階段にも光を注いでくれています。

洋館に調和した和室

洋館ではありますが、旧近藤邸の個室はすべて和室です。

伝統的な日本の部屋の中でもちょっと面白かったのが、窓辺に作り付けられたソファー。
畳の上にイスを置かなくても腰掛けられるので、便利だし畳に優しいですね。

また出窓の一部に机として使えそうなスペースがありました。
限られた空間を広く使うための工夫が感じられます。

この和室は居間である洋室とつながっていますが、同じテイストの壁や洋式のドアで区切られているので違和感がありません。
洋室よりも一段高く作られているのでより空間が独立し、寝室としても違和感はなかったでしょう。

そして居間には現代でも憧れの暖炉が!
シンメトリーな造りで外国の洗練されたデザインがステキです。
ここで家族団らんがあったのかと思うと、暖炉に火がついていなくてもなんだか暖かく感じられます。

室内と庭との繋がり

とにかく窓が多い「旧近藤邸」。
採光はもちろん、日本になじみ深い縁側のように、屋内と外をつなげる役割もあったのではないでしょうか。

この1階の窓からは中庭を眺めることができます。
縁側のように直接外に出ることはできませんが、いくつも窓が続いているので庭との一体感があります。
また2階には広いバルコニーがあり、人目を避けて家族だけの開放的な空間を楽しめたことでしょう。
(現在窓やバルコニーの開閉は禁止されています)

市民から愛されて残った文化財

こんなステキな「旧近藤邸」も、一時は取り壊しの憂き目にあいました。
建主の近藤氏が亡くなったのちに人手に渡り、老朽化が進むなかで取り壊しが決まったのです。
そんななか藤沢市民の声によって反対運動が起こり、新聞やニュースによって保存の呼びかけが広く伝えられました。

その結果、歴史的価値がある文化財として現在の場所に移築され、保存されることになったのです。
この活動が市民の力によっておこなわれたことに大きな意味があると紹介されています。

藤沢に住んでいても、この「旧近藤邸」を知らなかった方も多いのではないでしょうか。
大正モダンを感じられる優美さがありながら、機能的な造り。それでいて遊び心のある美しく無駄のない装飾など、取り上げたらきりがないほど素晴らしい建築でした。

機会があったらぜひ見学してみてください。

旧近藤邸
住所:神奈川県藤沢市鵠沼東8番1号
TEL:0466-23-2415(藤沢市民会館)
アクセス:JR東海道線【藤沢駅】、小田急【藤沢駅】下車徒歩10分
     江ノ電【石上駅】徒歩5分
見学時間:9:00−17:00
休館日:月曜日、休日の翌日、12月28日〜1月4日
予約不要、入場料無料

*見学時には隣接する藤沢市民会館内の「文化芸術課事務所」へお声がけください。